転勤前の退職２ 前回質問の続きです。 引越しを伴う転勤前に退職したいと言う申し出がありました。 …

Question

転勤前の退職２

前回質問の続きです。

引越しを伴う転勤前に退職したいと言う申し出がありました。

◯この人が転居を伴う転勤を拒否することはできるのでしょうか？
まだ会社に正式に退職を申し出た訳ではなく、
本人は今の職種
(降格の上、職種変更の転勤です。
これは二重の懲戒になりませんか？
もちろん降格なので給与も下がります。)
で生活の基板が出来るまで勤めたいともらしてます。
懲戒(？)の理由は「上司に逆らうから」で、
特に会社に損害を与えたとは私には思えません。
本人は『中間管理職なので、自分が壁にならないと
下の者が苦労する』から『出来ないことははっきり言う』
のが逆らうと言われているとの主張です。

退職の理由は長男で独身の為に足の悪い父の世話を
自分がしないといけないので地元を離れられない
ということなのです。
障害者手帳もお持ちです。

ただ、会社としても辞令を出している以上、今さら引っ込める訳にもいきません。

◯懲戒としての転勤は認められるのでしょうか？

また、
◯上司が懲戒ではなく栄転だと言い切ることは
出来るのでしょうか？

本人には前述のとおり逆らうからと言ってしまってる
みたいです。

以上、何とぞよろしくご教示下さい。

Answer 1

何ともややこしそうな裏事情がありそうですけど（苦笑）、

◯この人が転居を伴う転勤を拒否することはできるのでしょうか？

「転勤辞令＝業務命令」ということでいけば、会社は当人の拒否に対して懲罰権を発動するのもしないのも手の内次第ということではあります。

ただ、こういう場合の「前例」ということは大事で、当事者の「誰それさんは転勤拒否でもその後普通にやっている」とかいう文句がまかり通るようになると業務命令自体の意義が損なわれますから、会社には辞令を出した時点で一貫性が求められます。だから、中間管理職が独断で専行させたのではまずい問題であるわけですね。

労働組合があれば、あくまで個別の問題として事例が白紙化できないかの交渉も不可能ではないと思います。会社にしても、本人との密約でなく組合が仲介した事実で辞令を撤回しやすくなるわけです。

そういうことがない場合、むしろ会社が確信的に仕掛けた転勤辞令は限りなく重いと考えるしかありません。事例に至った経緯とは別に、当人と上司との間にプライベートな個別事情で転勤不能との根回しができていた・いなかったの差も大きく、転勤拒否に対する会社の対処は最終的には「法廷の場」で有効性を争っていくしかなくなるんです。

〇二重の懲戒になりませんか？

お役所関係では「更迭」というコトバが多用されますが、この場合は要職の任を解かれたうえで別部署に配置換えになるのが普通で、しかしそれでも「懲戒人事」であることは稀です。単に仕事の不行き届きの責任を問われての、その要職に対しての「クビ」に過ぎませんので。

ですので、二重の懲戒を訴えるからには「降格の程度（二段階以上）」と「辞めざるを得ない立場に就かされる部署」などの条件が揃って懲罰の限度を超えているかどうか、そこを法廷の公正な場で判断してもらうことになります。

◯懲戒としての転勤は認められるのでしょうか？

会社の業務命令の行使の権利も会社の手の内次第ということにはなりますが、懲戒としての転勤辞令は本人がその懲戒理由を認めていることが前提になります。

でなければ、会社の方から「これは懲戒としての転勤命令だ」とまで言い切ることは普通はありません。本人が懲戒理由を認めていないんですから、理由は別に何とでもこじつけて辞令を発動しないことには、事態がドロ沼化するだけだからです。

◯上司が懲戒ではなく栄転だと言い切ることは出来るのでしょうか？

本人はもとより周囲の誰もが「白々しい」と口を揃えるような断言では、上司の威信が損なわれますね。ですので、それが可能となるのは会社組織全体の雰囲気が平素からそういうムードであるとか、その上司に特殊なパワハラ権力が備わっていて誰も逆らいようがない体制の場合になります（＝後者は当てはまりませんね）。

以上から、ご本人がまだ正式に退職の申し出をなさっていない場合、組合の力を借りる以外では転勤回避の嘆願を上申書にしたため上司に提出される手が残っているとはいえ、こういった嘆願書の効果は微力で期待は禁物です。

転勤辞令は、場合によっては本人を自発的退職に追い込める有力な武器ともなりえますから、会社に懲戒上の意図などがない場合こそ、取り扱いに慎重を期すべきところではあります。

今回の件がどの程度に複雑な事情をはらんでいるかは分かりませんが、上司に確信的意図があっての辞令である点では、その立場上の優位性から本人は厳しい局面に置かれていると第三者は観るしかなくなります・・・