「三菱重工長崎造船所事件」と呼ばれる著名な判例は3つほどあります。いずれも労働法判例です。 1.最判平成12年3月9日 三菱重工の長崎造船所で働いていた作業員が、更衣所等での作業服の着脱時間、始業時刻前の撒水作業等も労基法上の労働時間にあたるとして、当該時間分の未払割増賃金の支払いを請求した事案。労基法上の労働時間の概念が問題となった。 最高裁は、労基法上の労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたもの評価することができるか否かにより客観的に定まるもの」とした。 2.最判平成4年9月25日 三菱重工の労働組合が、佐世保港に原子力船が入港したことに対して抗議し、ストライキを決行したところ、三菱重工は、ストを指揮した労働者に対して懲戒処分を下し、労働者側が当該懲戒処分の無効確認を求めた事案。政治ストの争議行為としての正当性が問題となった。 最高裁は、政治ストについて、「使用者に対する経済的地位の向上の要請とら直接関係のない政治的目的のために争議行為を行うことは、憲法28条の保障とは無関係」であるとして、政治ストの正当性を否定した。 3.最判昭和56年9月18日 三菱重工の社員で労働組合員でもあった労働者がストライキを決行したところ、三菱重工が、就業規則に従い、ストライキ期間中の家族手当を支払わなかったため、当該労働者が未払賃金の支払いを請求した事案。ストライキの際の賃金カットの範囲が問題となった。 最高裁は、「ストライキ期間中の賃金削減の対象となる部分の存否及びその部分と賃金削減の対象とならない部分の区別は、当該労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らし個別的に判断するのを相当」とし、いわゆる賃金二分論(賃金の性質を生活保障的部分と労働対価部分とに分け、ストライキの場合であっても前者の部分は削減できないとする理論)を否定した。
ID非公開さん <三菱重工業長崎造船所事件> 福岡高裁判決平成6年3月24日(労民集45巻1=2 号123頁) 計画年休 (事案) 船舶等の製造・管理を業とするY会社のA造船所 では、昭和59年以降、夏季の連続休暇を実施する 一環として有給休暇の一斉付与措置を行っていた。 しかし、これに反対する少数労働組合Bの組合員 に対しては、そのような措置をとっていなかった。 昭和62年に労基法が改正され、協定による計画的 年休付与が定められたことから、Y会社は、反対 するB組合にも計画年休措置をとることができると 考えた。そこで、昭和63年10月、B組合と計画年休 措置について団体交渉を行ったが、合意には至ら なかった。他方、Y会社は、A造船所の従業員の98 %で組織するC労働組合との間で、平成元年7月25 日、26日の2日間を、年休日とする計画年休付与を 実施した。B組合の組合員であるXは、同月27日、 28日に年休を取得するとして欠勤した。Y会社は、 計画年休付与措置によって、Xの年休残日数が1日 になっているため、27日は年休となるが、28日は 欠勤となるとして、28日分の賃金を控除した。 Xは、残存保有有給休暇日数の確認と控除分の賃金 の支給の支払いを求めて訴えを提起した。1審は、 Xの請求を棄却したので、Xは控訴した。 (判旨) Y会社A造船所における本件計画年休は、労基法39条 6項の趣旨に則り、年休の取得を促進するため、平成 元年から、C組合との間の書面による協定に基づいて 実施されたものである。本件協定の締結はあたっては、 昭和63年10月以降、3つの労働組合との団体交渉を 通じて、制度導入の提案、趣旨説明、意見聴取等適正 な手続を経由したことが認められる。そして、本件 計画年休は、その内容においても、事業所全体の休業 による一斉付与方式を採用し、計画的付与の対象日数 を2日に絞るとともに、これを夏季連続休暇の実現を 図るという法の趣旨に則ったものであり、現時点に おいて年休取得率の向上に寄与する結果が得られて いると否と問わず、Xについて適用を除外すべき特別 の事情があるとは認められない以上、これに反対する Xに対しても、その効力を有すべきものというべきで ある。 (解説) 計画年休制度は、昭和62年の労基法改正の際に、年休 の取得の向上を目的として導入されたものである。 (労基法39条6項)計画年休は、過半数代表と使用者と の間で書面による協約を結び、年休の時季を定めた場合 には、労働者の時季指定権と使用者の時季変更権がともに 消滅し、協定が定めた時季に年休日が特定されるという べきものである(ただし、この効果は、労働者の年休の 5日分を超える部分だけである)。計画的付与の方法と しては、本件のような一斉付与方式もあるし、その他、 班別の交代制付与方式、付与計画表による個人別付与 方式等がある(昭和63年1月1日基発1号を参照)。
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