現役の消防官です。 防火服ですが「全く燃えない」というものではありません。火の中に放り込めば、燃えます。 どういう服なのかというと、まず防炎素材(アラミドという化学繊維)でできています。 防炎というのは「炎を近づけて燃えても、炎を離すと火が消える」というものです。つまり「炎に触れていなければ、一般的な繊維のように単独で燃え続けることはない」というものです。 実際、火災現場で高温の物に触れると、燃えたり焦げたりしますが、離れれば短時間のうちに火が消えるんです。 次に、断熱性があります。 火災現場というのは、かなりの高温です。一般住宅(木造)の火災でも、炎が上がっている室内なら数百℃の温度になりますが、防火服を着ていれば、すぐに熱さが着ている人に伝わることはありません。 なので、燃えている室内でも数分間の消火活動ができます。その状態で放水活動をすると、すぐに室内の温度が下がりますから、危険な状態ではなくなります。 しかし、デメリットもあります。 先にも書きましたが「防炎性」というのは「不燃性(燃えない)」ではありません。継続的に炎にさらされれば燃えるんです。あくまでも「燃え広がりにくい」だけです。 また、外部からの熱を防ぐ「断熱性」は、内部の熱も中に閉じ込めます。なので、長時間着用していると防火服の中は「蒸し風呂」状態になり、熱中症になる危険性があります。 昔、使用していた銀色の防火服は、アルミ蒸着素材がありました。あれは銀色なので赤外線(熱線)を反射することで内部に熱が伝わりにくいようになっていましたが、薄かったため、高温の環境に長時間いることが困難だったのです。そのため、現在では昔の防火服より厚くて重いですご、より安全性を向上させた素材を使っています。 さて、消防官3名、警察官1名が巻き込まれた火災ですが、原因については現時点では詳しい状況が分からないので、なんとも言えません。 考えられそうな人的被害の原因は ・内部進入後に急激な燃焼拡大(フラッシュオーバーやバックドラフトなど)が起こった ・煙などはひどくなかったが、倉庫内の収容物が崩れるなどして下敷きになった ・崩れた収容物によって退路を絶たれた などがあろうかと思います。 大型の倉庫は、常時人がいるものではなく、居ても内部に詳しい従業員などになります。そのため、一般的なビルなどに比べ、防火に関する規制が緩くなります。 また、防犯上の理由から窓などの開口部が少なく、避難したり消火のために中に入ることも困難になります。 さらに、収容物が多岐にわたり、可燃性のものや燃えた際に可燃性ガスや有毒ガス(一酸化炭素、シアン化水素など)が発生しやすいこともあります。 これらに加えて、近年ではネット通販などの拡大から、大都市郊外にメーカーや流通業者、通販業者などの大型物流倉庫が増えています。 このため、近年、大規模な倉庫での火災が目立つようになってきました。 大規模倉庫火災は、一たび発生すると消火に手間がかかり、鎮火まで時間を要します。 このような「消火活動が困難な火災」に立ち向かおうとした消防官や、人的被害状況の把握に努めようとした警察官が巻き込まれるという今回の事態は、無念でなりません。
「一酸化炭素中毒」ね。開口部の少ない倉庫なんで、今回はおそらく「フラッシュオーバー」でしょう。中に入りました。何らかで窓が割れました。新鮮な空気が入りました。爆発的に燃焼しました。こうなりゃ、防火服も空気呼吸器も役に立ちません。 御冥福をお祈りいたします。
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