大学の理系生とその先についての疑問 企業の技術職の募集要項には、理系出身という条件が含まれています。

Question

大学の理系生とその先についての疑問

企業の技術職の募集要項には、理系出身という条件が含まれています。理系出身者と、そうでない人とは、技術職でやっていくという観点でそんなに差があるものでしょうか？

また、理工学部に入ったばかりの１年生と、学部３年間を経た４年生とでは、研究室でやっていくという観点でそんなに差があるものでしょうか？

割合ちゃんとした所だと思われている所に通っているのですが、大学で習う理工系の内容を自分のものにしている人は、100人中10人くらいの比率だと思われます。
私の予測になりますが、理系の内容を人に説明できるほど理解していなくても、実験レポのテキストの写経などでだいたい雰囲気はつかめた程度、あるいは時間をかければ教科書を見ながら基本問題は解ける程度、の差が理系生と理系以外の人を分けていて、その差が卒研や修士、技術職をやってけるかどうかの、結構大きな差になるのかなと現状思っています。

もっと大きな差があるのか、
それとも、上で書いた程度の差なのか、
はたまた、配属前の３年間は無意味、技術職就職前の大学、大学院は無意味なのか（ここでの無意味というのは、「理系的に」という意味です）、

正直どう思ってますか？

教えて下さい。

Answer 1

国立大工学部の元教員です。

知識の有無は大きく影響するでしょうね。まず４年生の卒業
研究の場を想定しますが，例えば先生が「この応力拡大係数
を求めてこい」と言われて，文学部の学生が「はいわかりま
した」でしょうか？ もちろん，工学部の学生でも，ご質問
文にあるように半分くらいの学生は「おっと，ちょっと待っ
てください。まず破壊力学の復習をしてから出直します」と
なりますが，でも何を復習すればいいかくらいは頭の中に
入っています。また，実際その係数を求めようとしたら，
面倒な実積分が出て来たりするけど，経済学部の学生がその
積分ができるとは全く思えません。たいていは複素空間で
複素積分することになり，やはり工学部の学生でも，「おっ
とちょっと待ってください。まず２年生のときの複素関数論
の復習をしてから出直します」と言う人もいますけど，でも
勉強の仕方はわかっているから，1週間後くらいには答が出
るでしょうね。法曹界の国家試験に合格するレベルの法学部
の学生でも，この積分は無理ってなわけ。３年生までの知識
はかなり広範なもので，広く浅く学んでいます。しかも100％
ではなく60％以上しか理解していない。でも復習の方法は
身に付いているわけだ。

卒業研究は，その広く学んだ中のある狭い範囲の，所属する
研究室の先生がいまやっている研究の一部を解決する作業に
なります。４年生（や修士・博士の学生）はその研究室の
大事な研究スタッフになっています。先生が出版して業績に
している論文の計算や実験や測定をしたのは，ほとんどが
学生です。これは東大（35位）より上位のランキングの
米国大学でも同じです。毎日，朝から晩まで研究をしながら
先生と打ち合わせをして進めていって，卒論や修論を書いて
それを学会の論文集や国際誌に投稿しているんですよ。

さて，問題は就職後ですね。僕は大学から出たことが無いの
で詳細は知りませんが，卒業生がときどき相談に大学に来ます。
現場でぶちあたった問題・課題の解決で助言を求めてきます。
ということは，僕ら教員が持っている知識は現場でも有用だと
いうことですね。また卒業生で会社のお金をちょっとですけど
使えるようになると，会社で実験をしながら，大学にちょっと
寄付（研究費を大学に）して数値計算でその実験結果を評価し
てもらうなどの共同研究もしますよ。また，大学の教科書を
ずっと使っているという設計部にいる卒業生もいます。これ
すべて，文学部・経済学部の卒業生にはできない。少なくとも
基礎的な工学の勉強を３年分してもらわないと，言葉も理解
できないから相互理解が不可能。応力拡大係数？？？ それ
何？ という人と一緒に，現場の問題を解決はできないですよ。

大学工学部４年生が，飛行機・船・橋梁などの設計はできま
せん。講義で習った範囲だけでは全くといっていいくらい
不可能です。でも就職後に半年でも現場で訓練すればできる
ようになる。それは基礎を知っているから。なぜ影響線載荷
をしているのかとか，なぜ応力集中が起きるのがその箇所な
のかなどなど，これも文系の卒業生にはほぼ不可能でしょう。