何故警察は広域緊急援助隊の中にP-REXという特別救助隊を作ったのですか？

Question

何故警察は広域緊急援助隊の中にP-REXという特別救助隊を作ったのですか？本来、救助なら消防の救助隊、特別高度救助隊などが行うのにわざわざ警察にも作った理由は何なのでしょうか？？

Answer 1

警察の責務を定める警察法第2条に、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、と規定されています。そして、刑事、交通など警察の業務の一つである警備を定める警備実施要則の中に治安、雑踏と共に災害警備実施について規定されており、その中で災害発生時の措置として人命救助が入っています。
この警備実施要則は国の通達であり、各警察本部を拘束していることから、全国の都道府県警察本部は等しく人命救助活動を行うこととなっていて、警備実施の基幹部隊である警備部の機動隊に救助隊を設置していることが多いです。
ただ、警察の業務は治安維持や犯罪捜査、交通行政など非常に幅広く、災害対応を主任務としている消防と比較して救助隊の業務がパートタイマー的になりがちであることは事実で、日本最大の警察本部である警視庁ですら救助業務に専従する特殊救助隊を災害対策課内に設置したのは最近で、10個隊ある機動隊に編成している機動救助隊も他の警備業務と兼任ですし、10隊全てが常時稼働している訳ではありません。
まして、他の府県警察本部では、火災や交通事故など日常的な災害で警察救助隊が出動することは殆どなく、消防にお任せ状態である訳ですが、任務として定められている以上、国の警察庁としても実態はともかく消防救助隊に対する対抗心は強く、消防の緊急消防援助隊に対する警察の広域緊急援助隊、消防の高度救助隊や特別高度救助隊(いわゆるハイパーレスキュー等)に対するP-REXや特殊救助隊などが作られています。
ただ、救助技能的にはバラツキが大きく、他の方が回答している通り、戦略に長けた警察が実力以上に広報していることも事実です。
更に警察署の警備課や機動隊などが消防署の救助隊や消防学校で合同の救助訓練をしている例もあるのですが、訓練を重ねてやっと意思疎通や共同活動ができるようになった頃に人事異動があり、救助と全く関係のない部署から素人同然の職員が来てリセットされてしまうことが多く、実際の災害出動がないのと併せて、なかなか練度が上がらないというのが現状のようです。(但し、例外として長野県警の山岳警備隊なと専従性や練度の高い部隊もあります。)

Answer 2

もともと、警察の機動隊にも救助を行う部隊があり、消防の救助工作車と同じような車を持っています。
とはいえ、実態として、これらの隊が平時の災害現場（交通事故現場など）で救助活動を行うことはありません。消防の救助隊の方が各市町村などの消防本部にあるため、到着が早いこと、現場経験が少ないことなどがあります。

しかし、大規模な災害（震災など）や大規模な事故（列車事故や船舶、航空機事故など）が発生した場合には、消防の救助隊だけでは装備も人員も不足します。
そのため、警察の救助隊も現場に行くようになった…というより「今までも現場に行ってたけど、あまり知られてなかったので、その存在をアピールしたい」というのが本音でしょう。
以前、警察官の友人から聞いたことがあるのですが、警察と消防が共同して救助活動や捜索活動などを行う場合、テレビカメラの前をウロウロするだけの仕事という警察官がいるらしいのです。また、要救助者を担架で運ぶときは、足場の悪いところなどは「ここは経験豊富な消防さんにお願いします」と言って、テレビカメラの前は警察が運ぶんです。
そうやって「手柄を取ったように見せたい」わけです。
これに似た話は、映画「突入せよ！あさま山荘事件」の終盤で、確保した犯人を山荘の外に連れ出す時に「先頭は長野県警機動隊、（応援派遣の）警視庁機動隊はその後」と言って、テレビの前での「体面」を意識する姿が出ています。

私は消防に勤めていますが、はっきり言って、警察の救助隊が単独で活動することには信用を置いていません。というのは、消防の救助隊は、常に救急隊と連携し、必要があればＤＭＡＴなどの医師とも連携を取って現場活動をしています。つまり「常に要救助者の生命、身体を保護することを考えながら活動方針を立てている」のです。
例えば、車の下敷きになった人を救出する場合、単に車を持ち上げればいいというものではありません。圧迫が解かれることで、出血が起こったり、血圧が下がることでショック状態に陥ったりします。このような場合には、きちんとした知識を持って、装備を使って傷病の悪化を防がねばなりませんが、警察の救助隊にはそれらの装備や知識があるのか？というと、正直不安なんです。
最近では、警察の救助隊が、消防学校などで消防から指導を受けることもありますが、まだまだ十分とは言えません。
はっきり言えば「消防の救助隊に同乗実習しに来る」ぐらいでないとダメです。