私は海上保安学校の出身で海上保安の現場を経て転職し現在公立高校教員として勤務しています。 海上保安官の幹部と一般職員について,海上保安大学校と海上保安学校の違いについて少し詳しくお話します。かなりの長文になります。 まず,海保の船艇部内では幹部を「士官」一般職員を「科員」と呼びます。 職制 海上保安庁はUSCG(米国沿岸警備隊)を手本に創設され職制(海上保安官の階級や職務分担)もUSGCを基本とし日本の社会制度に合わせてアレンジされています。 USCGは軍組織で有事の際は海軍と統合運用されるため階級制度や指揮命令制度は海軍と全く同じです。軍組織では指揮官たる士官と指揮を受け実力行使の任にあたる下士官・兵卒は職務が明確に区別されます。 (兵卒:いわゆる「兵隊さん、水兵さん」です。下士官:兵卒から選抜され下士官訓練を経た兵卒のリーダーであり士官の補佐役です) 士官の職務は与えられた任務の状況を判断し最善の解決方法を決め部下(下士官・兵卒)に命令を下し任務を遂行します。 士官は正しく状況判断し対処する能力。時には部下を危険にさらす命令も躊躇なく下す決断力や部下を統制する能力が要求されます。また,現場士官は部下とともに行動し指揮します。指揮官が落伍したら任務は遂行できないので,下士官・兵卒と同等以上の実践能力も必要です。 下士官・兵卒は士官から下された命令をそのとおりに全力で実行し任務を成し遂げる能力・体力・気力が要求されます。 海上保安大学校と海上保安学校 海上保安庁の士官は軍組織の士官と同等の職務です。科員が下士官・兵卒相当の職務です。 士官は「指揮能力」,科員は「命令を忠実に実行する能力」と異なる能力が必要なため士官と科員は別々の教育訓練課程で養成されます。士官の能力は短期に養成できないため4〜5年の士官教育訓練を必要とします。 士官は士官学校たる海上保安大学校で科員は新隊員教育機関たる海上保安学校で養成されます。 現在,海上保安庁には下士官・兵卒の職分は存在しませんが,創設期から続く階級制と初期の教育体系から過去には下士官・兵卒の区分があったことが伺えます。 階級 兵卒:海上保安士補(現在この階級は使われていない) 下士官:海上保安士 士官:海上保安正 高級士官:海上保安監 海上保安学校の現在の船舶運航システム課程の前身では初任課程6ヶ月を修了し現場に出て兵卒相当の職務に就きました。その中から選抜された者が海上保安学校研修科に進み6ヶ月の課程で業務に必要な知識技術資格等を取得し修了後に下士官相当の職務に就いていました。 後年,教育課程が改編され初任課程と研修課程が統合され1年課程となりました。現在は海上保安学校を出て数年間は兵卒相当の職務に従事し勤務評定により下士官相当の職分となって行きます。 軍組織では士官と下士官・兵卒は全く異なる人事体系となっており海上保安庁でも士官は本庁人事と呼ばれる全国転勤体系,科員は管区人事と呼ばれる管区内転勤体系で人事は分離されています。また,軍組織(特に米国の軍隊)では下士官・兵卒から士官に登用されることはありませんが,海上保安庁では科員が海上保安大学校特修科を修了することで士官学校を出た者として扱い士官登用されます。しかし,士官訓練を4年6ヶ月受けた本科卒業生と6ヶ月〜1年間の短期士官訓練の特修科修了生とでは当然に昇任スピードと昇任限界には大きな差があります。 ジョブローテーション(職務ローテーション) 士官は広い視野と判断力,指揮能力を要求されますので,船艇勤務〜陸上勤務を数年間隔でローテーションし海上保安業務に広く精通した高い指揮能力を獲得して行きます。 海保大本科卒士官はさらに広範な経験を積み海上保安業務を推し進めて行くために他省庁や在外公館への出向や大学院などへ派遣されることがあります。 特修科士官は海上保安庁外への出向や派遣はありません。 科員は原則船艇勤務ですが,船艇勤務から陸上勤務に移る者もいます。 船艇生活環境 軍の艦艇は士官と下士官・兵卒の生活環境を明確に分けています。 居住区,食堂,浴室,休憩室など士官と下士官・兵卒は区分され相互交流することはありません。 海上保安庁の船艇も同様に士官と科員は別々の生活環境ですが厳重には区分されていません。 専門職 潜水士は士官と科員どちらからも選抜される専門職です。当然,士官と科員は職分が異なります。士官は潜水班長として潜水班を指揮します。科員は士官(班長)の命令に従って職務を遂行します。 潜水士の他には語学や鑑識などの専門職があります。科員から専門職に選抜された者は長くその職に留まりその道のエキスパート/スペシャリストとなる傾向があります。 海上保安学校の航空、情報通信、管制、海洋科学の各課程は最初からそれぞれの分野の専門職を養成する課程です。専門職となるにはそれなりの教育期間が必要なため情報通信と管制は2年課程です。また、情報通信は海保校修了後船艇の科員(通信士補)と陸上勤務をジョブ・ローテーションし専門能力を高めてゆきます。 航空は海保校・舞鶴1年課程修了の後に海保校・宮城での操縦研修に入ります。 海洋科学は海保校1年課程修了後に本庁や管区本部に配属され業務に就きつつ夜間大学で学び専門能力を高めます。 航空整備士は海保校在校中の船舶運航課程の者からの要員選抜選考が行われ海保校・舞鶴修了後に海保校・宮城の航空整備基礎研修を終えた後、航空基地で職務に就きながら実地研修訓練を受け専門能力を高めてゆきます。
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潜水士 国際捜査官 など海上保安官の中でも違う業務内容が出来るのは年齢制限が主なので学校、大学校どちらも同じです。 海上勤務がいいのなら確実に学校です。 海上勤務でも後に人事係に配属になったり出来ます!(人事係とはいわゆる説明会に出向くなどする役割) 大学に行って保安学校なら高卒ですぐに保安学校に受験するのがいいと思います。 理由としては保安学校に行く人で大卒は非常に少なく同世代が居ないのはかなりきついからです。 大卒なら保安学校よりも大学校に行くべきだからです。 高校2年生のあなたなら今から毎日1時間でも勉強すれば十分高卒で保安学校にいけると思います。 FIGHTです!
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