未払いの給料・給与・基本給等の所定賃金(所定内賃金)を使用者に対して請求する場合には,労働者の側で,使用者との間で労働契約(雇用契約)を締結したことおよび所定の労働の提供をしたこと(終了したこと)を要件事実として主張・立証する必要があります。労働契約の締結については,労働契約書によって立証するのが典型的です。労働契約の内容については,労働契約書のほか就業規則等を証拠とする場合もあります。所定労働を提供したことについては,争われることは少ないかもしれませんが,一応,出勤簿等を証拠として用意しておいた方がよいかもしれません。 未払い所定賃金請求における立証 給料や給与など,労働契約で定められた所定労働に対する対価としての賃金のことを所定賃金(所定内賃金)といいます。基本給などと呼ばれることもあります。 未払い給料や給与等の支払いを請求する方法としては,裁判外での交渉をはじめとして,いろいろな方法があります。 もちろん交渉で話を付けるのが望ましいことは間違いありません。しかし,話がつかなければ,最終的には訴訟によって請求する必要があります。そのため,あらかじめ訴訟になることも見越しておく必要があります。 未払い所定賃金を請求する場合には,労働者の側で,以下の要件事実を主張・立証しなければなりません。 ・使用者との間で労働契約を締結したこと ・所定の労働を提供したこと(労働の提供が終了したこと) したがって,請求をし交渉をする段階においても,これらの要件事実を立証することができるのか,つまり,証拠を用意できるのかどうかを検討しておく必要があるでしょう。 なお,給料や給与などの所定賃金が支払われていないことは,労働者の側で立証する必要はありません。むしろ,所定賃金を支払ったことを,使用者側で主張・立証しなければならないからです。 労働契約の締結を立証するための証拠 未払い給料・給与など所定賃金を請求するためには,使用者との間で一定の所定賃金を支払う旨の労働契約が締結されていたことを主張・立証する必要があります。 また,実務上は,労働契約の内容として所定賃金の金額・給料等の締日・支払日なども主張・立証するのが通常です。 使用者との間で労働契約を締結したことやその内容については,労働契約書(雇用契約書)を証拠とするのが最も典型的でしょう。または,所定賃金等の労働条件を定めた就業規則を証拠とすることもあるでしょう。 これらが用意できない場合には,入社時に交付される雇用条件を記載した書面などが考えられます。 上記のような書類がないという場合でも,給与明細書に所定賃金の金額や内訳等が記載されている場合が多いので,この給与明細書を,労働契約を締結していたことの証拠として利用することも可能です。 また,銀行振込の記録(通帳の写し)や領収書などによって,賃金の金額や支払日を証明することもあります。 労働契約とは? 労働契約法 第6条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。 労働契約の成立要件 労働契約は,労働者が使用者に使用されて労働し,使用者がこれに対して賃金を支払うことについて,労働者及び使用者が合意することによって成立します(労働契約法6条)。 したがって,労働者が「使用者に使用されて労働すること」を,使用者が「労働者に対して賃金を支払うこと」を合意することが,労働契約の要件です。 労働契約は諾成契約ですので,両当事者の合意があれば成立します。労働契約書を作成せず口頭のみであっても成立するということです。 ただし,口頭のみで契約をしてしまうと,後に労働条件等について争いが生じた場合に,立場の弱い労働者が不利になってしまうことが少なくありません。 そこで,使用者は,労働契約締結に当たり,「労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とされ(労働基準法15条1項),そのうちでも特に重要な事項については,口頭では足りず,書面を交付しなければならないとされています(労働基準法施行規則5条)。 また,上記重要事項以外の労働条件についても,使用者は,「労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について,労働者の理解を深めるようにするもの」とされ(労働契約法4条1項),また,「労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について,できる限り書面により確認するもの」とされています(同条2項)。 労働の提供を立証するための証拠 所定の労働を提供したことについては,使用者側で全面的に争ってくるということはあまりありませんが,念のため,一応の立証はしておくべきでしょう。 ともかく実際に出社していたことさえ分かるような証拠が用意できれば,とりあえずは十分でしょう。 ただし,使用者側が労働の提供を全面的に争ってくるような場合,つまり,まったく働いていないと反論してくるような場合には,ある程度の立証が必要となります。 例えば,所定労働の提供は,出勤簿・タイムカード・業務報告書等によって立証します。これらがない場合には,出勤日・労働時間を記録した証拠を探すことになります。 ご本人で書いていた日記などを証拠とする場合もありますが,さすがにこれだけでは,証拠として弱いでしょう。日記等の内容を補完するような証拠が必要となってきます。 日記等の内容を補完するための証拠としては,同僚の証言やご本人の陳述が必要となる場合もあります。 ですので、集められる証拠を全て集めて下さい。 但し、雇用契約書を書いていないということなので、かなり厳しいかと思われます。 ですので、今回はこっちの事に付いては触れず、国の未払賃金立替払制度を利用しましょう。 未払賃金立替払制度とは? 事業主が行方不明の場合は、事実上の倒産と見なし、国が一定限度の賃金を立て替える「未払賃金立替払制度」を利用することができます。 制度の利用方法と注意点 注意点 未払い賃金が発生したとしても、立替払いを請求できるかどうかについては、時期的な制限があります。 したがって、働いた分の賃金支払いが確保されないことが判明し次第、早急に請求手続きを行う必要があります。 立替払いを受けることができるのは、破産申立があった日の6か月前の日から2年以内に退職した従業員の方のみです。 利用方法 中小企業の事実上倒産の場合の請求手続き 中小企業が事実上倒産した場合には、事実上倒産した企業の本店所在地を管轄する労働基準監督署へ、認定申請書を提出し、倒産の認定を受けるようにします。 事実上倒産した企業が事業活動を停止しており再開の見込がなく、賃金支払い能力を喪失している場合には、労働基準監督署によって倒産の認定がなされることとなります。 ただし、他の労働者が既に倒産の認定を受けている場合には、あなたが倒産認定の申請をする必要がありません。 詳しいやり方は弁護士ドットコム等で無料相談をされて下さい。
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