解決済み
公務員がストライキを起こしてはいけないのは、労働基本権に関係していませんよね?憲法の労働基本権では公務員のストライキは認めてありますが、法律で禁止されているということは、憲法の方が立場が強いとすると、ストライキを起こしてもよい。ということで、表現の自由に関係していませんか?
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(1) 憲法28条から導かれるストライキは、公務員には認められない。 公務員の労働基本権に対し必要やむを得ない限度の制限を加えることは十分合理的な理由があるので、公務員の団体争議権を禁じる法律は合憲であるとの判断が裁判で示されている。現在も裁判所は、この考え方に基づいた判断を示している。 公務員の労働基本権に対し必要やむを得ない限度の制限を加えることができるとする十分合理的な理由 ①公務員の地位の特殊性と職務の公共性 ※「公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、十分合理的な理由がある。」 ②公務員の勤務条件は法律により定められている事柄であり、政府には国会が定めた法律の委任のない事項について、争議行為により勤務条件の変更を行うことは問題がある。公務員に、これを認めることは憲法の基本原則である議会制民主主義に反する行為に当たる(国会の議決権を侵す)。 ※「私企業の場合のごとく労使間の自由な交渉に基づく合意によつて定められるものではなく、原則として、国民の代表者により構成される国会の制定した法律、予算によつて定められることとなつているのである。その場合、使用者としての政府にいかなる範囲の決定権を委任するかは、まさに国会みずからが立法をもつて定めるべき労働政策の問題である。したがつて、これら公務員の勤務条件の決定に関し、政府が国会から適法な委任を受けていない事項について、公務員が政府に対し争議行為を行なうことは、的はずれであつて正常なものとはいいがたく、もしこのような制度上の制約にもかかわらず公務員による争議行為が行なわれるならば、使用者としての政府によつては解決できない立法問題に逢着せざるをえないこととなり、ひいては民主的に行なわれるべき公務員の勤務条件決定の手続過程を歪曲することともなつて、憲法の基本原則である議会制民主主義(憲法四一条、八三条等参照)に背馳し、国会の議決権を侵す虞れすらなしとしないのである。」 ③企業におけるストライキでは、労働者の過大な要求は企業の存立が危うくなり、労働者自身も失業を招くことになるので、労働者の要求は制約を受ける(市場の抑制力が働く)。公務員には、市場の抑制力が働くことはないので、団体争議権の圧力は強まるだけで抑制される要素がない。 ※「一般の私企業においては、その提供する製品または役務に対する需給につき、市場からの圧力を受けざるをえない関係上、争議行為に対しても、いわゆる市場の抑制力が働くことを必然とするのに反し、公務員の場合には、そのような市場の機能が作用する余地がないため、公務員の争議行為は場合によつては一方的に強力な圧力となり、この面からも公務員の勤務条件決定の手続をゆがめることとなるのである。」 ④労働基本権を制限に代わる措置が、法律により十分にとられている。 ※「争議行為等が、勤労者をも含めた国民全体の共同利益の保障という見地から制約を受ける公務員に対しても、その生存権保障の趣旨から、法は、これらの制約に見合う代償措置として身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件についての周到詳密な規定を設け、さらに中央人事行政機関として準司法機関的性格をもつ人事院を設けている。ことに公務員は、法律によつて定められる給与準則に基づいて給与を受け、その給与準則には俸給表のほか法定の事項が規定される等、いわゆる法定された勤務条件を享有しているのであつて、人事院は、公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件について、いわゆる情勢適応の原則により、国会および内閣に対し勧告または報告を義務づけられている。そして、公務員たる職員は、個別的にまたは職員団体を通じて俸給、給料その他の勤務条件に関し、人事院に対しいわゆる行政措置要求をし、あるいはまた、もし不利益な処分を受けたときは、人事院に対し審査請求をする途も開かれているのである。このように、公務員は、労働基本権に対する制限の代償として、制度上整備された生存権擁護のための関連措置による保障を受けているのである。」 (2)憲法21条が保障する表現の自由であっても、公共の福祉に反する場合には合理的な制限を受ける。 ※「憲法二一条の保障する表現の自由といえども、もともと国民の無制約な恣意のままに許されるものではなく、公共の福祉に反する場合には合理的な制限を加えうるものと解すべきところ、とくに勤労者なるがゆえに、本来経済的地位向上のための手段として認められた争議行為をその政治的主張貫徹のための手段として使用しうる特権をもつものとはいえないから、かかる争議行為が表現の自由として特別に保障されるということは、本来ありえないものというべきである。そして、前記のように、公務員は、もともと合憲である法律によつて争議行為をすること自体が禁止されているのであるから、勤労者たる公務員は、かかる政治的目的のために争議行為をすることは、二重の意味で許されないものといわなければならない。してみると、このような禁止された公務員の違法な争議行為をあおる等の行為をあえてすることは、それ自体がたとえ思想の表現たるの一面をもつとしても、公共の利益のために勤務する公務員の重大な義務の懈怠を慫慂するにほかならないのであつて、結局、国民全体の共同利益に重大な障害をもたらす虞れがあるものであり、憲法の保障する言論の自由の限界を逸脱するものというべきである。」 ※最大判 昭和48年4月25日 刑集第27巻4号547頁
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