☆今，司法書士試験勉強：「会社法」「取締役の利益相反行為」 の所の勉強をしています。 次の点につき，どなたか教え…

Question

☆今，司法書士試験勉強：「会社法」「取締役の利益相反行為」
の所の勉強をしています。
次の点につき，どなたか教えてください。１ テキストの「取締役会：利益相反行為」の所に，次の正誤
問題があります。
「取締役会設置会社株式会社Ａの代表取締役Ｂは，みずか
らの計算においてＡ社の事業の部類に属する取引をし，
これによりＡ社に損害を与えたときは，その取引につ
きあらかじめＡ社の取締役会の承認を得ていたとして
も，Ａ社の損害を賠償する責任を負う。」
２ 上記は，会社法第３５６条１項１号の「自己のためにする
競業取引行為」であり，それにより，会社Ａに損害を与え
ている。ということは，Ａ社の取締役会の承諾があったと
しても，取締役としての任務忠実義務を怠ったことになり，
会社法第４２３条１項に違反し，Ａ社の損害を賠償する責
任を負うと判断して，「正しい○」としました。
３ ところが，テキストでは「間違い×」になっていて，解説
がありませんので，この結論が導かれる道筋が分かりませ
ん。
４ どなたか教えてください。

Answer 1

会社法第356条1項1号の「自己のためにする競業取引行為」については、まず、2号の自己取引と異なり「過失責任」です(428条は、利益相反の自己取引を無過失責任としています)。

次に、2号3号の利益相反と異なり、任務を怠ったと推定する規定がありません(423条3項)。423条3項が、356条第1項1号の競業取引は除かれています。なので、Bに任務を怠ったという過失が具体的に存在し、立証される必要があります。423条1項の会社に対する損害賠償責任は過失責任ですので。

では、Bに何か具体的に任務違反があるか？ですが・・・
本問では、「Ａ社の取締役会の承認」を得ているなら、この点での任務違反はありません。なので、「Ａ社に損害を与えたときは，その取引につきあらかじめＡ社の取締役会の承認を得ていたとしても，Ａ社の損害を賠償する責任を負う。」わけではありません。ということで、選択肢は×となります。(もちろん、他の任務懈怠があれば責任を負いますが。)

この選択肢は、356条1項1号の「自己のためにする競業取引行為」が、過失責任であり、過失の推定も働かない、という知識をきいています。

（取締役が自己のためにした取引に関する特則）
第428条
1.第356条第1項第二号（第419条第2項において準用する場合を含む。）の取引（自己のためにした取引に限る。）をした取締役又は執行役の第423条第1項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない

第423条
1.取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人（以下この節において「役員等」という。）は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

3項.第356条第1項第二号又は第三号（これらの規定を第419条第2項において準用する場合を含む。）の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
1.第356条第1項（第419条第2項において準用する場合を含む。）の取締役又は執行役
2.株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
3.当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役（委員会設置会社においては、当該取引が委員会設置会社と取締役との間の取引又は委員会設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。）

Answer 2

自己直接の利益相反取引をしているわけではありません。（Ａ社とＢとの取引ではない）
競業取引を、しかも機関承認を経て行っているので、無過失責任でもなく、損害額の推定も働きません。
利益相反取引ではないので、任務を怠った事の推定も働きません。
４２３条２項、３項をご確認ください。

２ 取締役又は執行役が第３５６条第１項の規定に違反して第３５６条第１項第１号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
３ 第３５６条第１項第２号又は第３号の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。