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【不動産登記】表題登記がない土地の所有権を時効によって取得した者の所有権の保存登記の可否についてお聞きします。 …

【不動産登記】表題登記がない土地の所有権を時効によって取得した者の所有権の保存登記の可否についてお聞きします。 ある解説書に、先例や登記研究などの根拠を示さないで、次の解説がありました。表題登記がない土地の所有権を時効によって取得した者は、直接自己を所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができない(法74条1項各号参照)。 一方、別の箇所で、 区分建物以外の不動産については、表題登記がされる前に当該不動産の所有者に特定承継があった場合には、特定承継人の表題登記及び所有権の保存の登記を申請することができる。 という解説があります。 ここで質問です。 上記2つの解説は、時効取得と特定承継の違いがあっても、ほとんど条件が同じでほぼ類似的に考えることができると思ってしまうのですが、なぜ、このように解釈の違いが生じるのか、考え方や何が論点になっていると考えるべきかも分かりません。 そこで、両者の結論の違いがどのような考え方によるものかを教えてください。

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    説明の都合上、後先になりますが、先ず、「一方、別の箇所で・・・」 の方から。 > 一方、別の箇所で、 > 区分建物以外の不動産については、表題登記がされる前に当該不動産の所有者に特定承継があった場合には、特定承継人の表題登記及び所有権の保存の登記を申請することができる。 > という解説があります。 不登法第四十七条により、区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者には当該建物の表題登記申請義務があります (逆の言い方をすれば、申請人適格があることにもなります)。また、同法第三十六条により表題登記がない土地の所有権を取得した者には当該土地の表題登記申請義務 (申請人適格) があります。 ご質問者様がご覧になっている解説書 (以下 「解説書」) が言っている 「区分建物以外の不動産」 は素直に読めば 「区分建物以外の建物と土地」 のことになる筈だと思われますが、表題登記がない区分建物以外の建物の取得者は不登法第四十七条に基づいて、表題登記がない土地の所有権の取得者は同法第三十六条に基づいて、それぞれ当該建物あるいは土地の表題登記申請義務 (申請人適格) があることになります。これらの者が表題登記を申請すれば、その者は表題部所有者となりますから、これらの者は不登法第七十四条第一項第一号により所有権保存登記の申請人適格を有することになります。よって、解説書の 「別の箇所で」 以下は条文そのままのことを言っているということになります。 次に 「ある解説書に、先例や登記研究などの根拠を示さないで・・・」 の方に移ります。 > ある解説書に、先例や登記研究などの根拠を示さないで、次の解説がありました。 > 表題登記がない土地の所有権を時効によって取得した者は、直接自己を所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができない(法74条1項各号参照)。 ご質問者様も先にご指摘になったように 「表題登記がない土地の所有権を時効によって取得した者には時効取得前の所有者(前所有者)がいるはずです」 から、時効取得者は不登法第三十六条の 「新たに生じた土地の所有権を取得した者」 には該当せず、「表題登記がない土地の所有権を取得した者」 の方に該当することになりそうに思われます。もし本当に時効取得者が「表題登記がない土地の所有権を取得した者」 に該当するのであれば、時効取得者は同条に基づいて土地の表題登記申請人適格があることになり、表題登記申請人適格があるのであれば時効取得者は表題部所有者となり得ますから、時効取得者は不登法第七十四条第一項第一号により所有権保存登記の申請人適格を有することになる筈だと思われます。 にも拘わらず、解説書では 「表題登記がない土地の所有権を時効によって取得した者は、直接自己を所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができない」 と言っているわけです。解説書が間違っているという可能性もゼロではないとは思いますが、解説書が間違っていると言ってしまえば身も蓋もありませんので、取り敢えず 「解説書が言っていることは正しい」 という前提に立って、どういう理論構成をすれば解説書が言っているような結論を導き出すことが出来るかという方向から考えてみます。 解説書も、特定承継の場合には特定承継人による表題登記及び所有権保存登記の申請を認めていますので、特定承継が取得原因の場合と時効取得が取得原因の場合の違いを考察してみます。特定承継としての所有権取得原因 (以下、売買で代表させます) による取得者には表題登記申請義務を課することが出来るのに (申請人適格を認めることが出来るのに) 、時効取得者には申請義務を課することが出来ない (申請人適格を認めることが出来ない)のは何故かということです。その点について下記のように考えてみました (言うまでもありませんが、あくまで私見です)。 新たに生じた甲土地の原始取得者をAとし、Aが表題登記を申請しないでいるうちにこの土地を売買によって取得した者をBとします。また、新たに生じた乙土地の原始取得者をCとし、Cが表題登記を申請しないでいるうちにこの土地を時効取得した者をDとします。 1.不登法は、不動産の物理的状況を登記簿に正確に反映させるため、表題登記には申請義務を課し、表題登記申請義務の懈怠について過料を課することによって申請人に心理的圧迫を加え、もってその履行を促進することとしている。 2.不登法第三十六条は、(1)新たに生じた土地の所有権を取得した者 (前掲の例のAやC) と (2)表題登記がない土地の所有権を取得した者 (前掲の例のBやD) の両者に表題登記申請義務を課しているが、(2)所定の者が申請するとすれば、それは冒頭省略の登記 (中間省略登記の亜種) となって好ましいものではないから、法としては出来ることなら表題登記申請人適格を (1)所定の者だけに限定したい。 3.(1)所定の者が表題登記を申請して来ない場合、そのまま未登記で放置して不動産の物理的状況が登記簿に正確に反映していない状態にしておくよりは、冒頭省略を受忍してでも (2)所定の者に表題登記を申請させる方がマシであるので、法は(2)所定の者に表題登記を申請させることを認容した。 4.前掲例でのBに表題登記申請義務を課することは、「Bは、所有権に附随して、Aが負っていた表題登記申請義務を承継した (承継取得)」 という法的根拠で理論づけることが可能である。 5.これに対し、前掲例でのDの時効取得は原始取得であるので、Dの表題登記申請義務は 「Dは、Cが負っていた表題登記申請義務を承継した」 という法的根拠で理論づけすることは出来ない。 6.前記4で見たようにBに表題登記申請義務を課することには法的根拠の裏付けが得られるので、ギリギリBに表題登記申請義務を課すること (申請人適格を認めること) は出来るが、前記5で見たようにDに表題登記申請義務を課することには理論的裏付けが出来ないので、冒頭省略を受忍してまでDに表題登記申請義務を課すること (申請人適格を認めること) は出来ない。 6.以上のようなことから、不登法第三十六条に言う 「表題登記がない土地の所有権を取得した者」 の 「取得」 は 「承継取得」 だけを意味し、時効取得者のような 「原始取得」 は含まれない。 これが正解かどうかは分かりません。自分でも若干こじつけめいているように感じないでもありませんが・・・。

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