(1) >通説では一般的効力説であると言われていることは、他の質問からわかりした。 いいえ。個別的効力説です。 (2) >では、日本では一般的効力説をとってはいけないのでしょうか? 付随的違憲審査制においては、当該事件の解決に必要な限りで、違憲審査が行われるので、 違憲審査の効力も当該事件に限って及ぶと解されるので、個別的効力説が通説です。 なお、超少数説として、付随的違憲審査制を採用しつつ、一般効力説を採用する見解もあります。(兼子先生の説) しかし、通説からは、効力面にのみ憲法裁判所的な機能を認めることは論理的に無理があると批判されています。 (3) 日本は、付随的違憲審査制を取っています。そして、通説は、付随的違憲審査制を取る限り、個別的効力説が通説です。 理由① まず、憲法76条2項前段が「特別裁判所は、これを設置できない」と規定しているからです。 つまり、具体的事件を離れた「憲法裁判所」の設置は、憲法改正しない限り出来ないことになります。 理由② 次に、裁判所法3条が「法律上の争訟」を前提にしているからです。 理由③ さらに、通説は、憲法81条は、付随的違憲審査制を定めたものであり、すなわち、最高裁に与えられた権限は、具体的な訴訟を前提にして、その解決に必要な限りで違憲審査を行うにとどまると解しています。 (4) さて、通説が一般的効力説と勘違いされる原因のひとつとして 「尊属殺重罰規定の違憲判決」があります。 当時、刑法200条で尊属殺という条文がありました。 法定刑は、死刑又は無期懲役のみでした。 尊属殺、俗に言う“親殺し”は重罪だった訳です。 当時、悲惨な事件が起きました。 実の娘が、実の父親に夫婦同然の生活を強要されて、 未成年当時から5人の子供まで産んで、 実の娘は成人後に、思い余って、実の父親を殺したという事件です。 検察官は、刑法200条の尊属殺で起訴しました。 しかし、弁護士は余りにも気の毒すぎると、最高裁に上告して、 最高裁が刑法200条の違憲判決を出しました。 そして、最高裁は、刑法199条普通殺人罪で処理して執行猶予までつけました。 ①もし、一般的効力説を取っていたら、 たとえ具体的な事件がきっかけとはいえ、この最高裁判決がきっかけで、 刑法200条尊属殺の規定は自動的に無効になるはずですよね。 ②しかし、日本は付随的違憲審査制を取り、そして、個別的効力説が通説ですから、 この最高裁判決以降も、刑法200条の条文はそのまま残り、 刑法200条が廃止されるまで、更に20年近くかかりました。 理由は、頭の固い、年寄り国会議員たちが多かったからと言われています。 (5) だからこそ、あなたの疑問が出るわけですよね。 >では、日本では一般的効力説をとってはいけないのでしょうか? >一般的効力説が使われた判例はありますか? この刑法200条の尊属殺重罰規定の違憲判決が出た後、直ちに、 最高検察庁が各地検に対して、 「今後、尊属殺人が発生した場合には、刑法200条を使わずに、刑法199条を使え」という通達を出しました。 (付随的違憲審査制を取って、個別的効力説である以上、再び尊属殺人が発生した場合には、検察が刑法200条で起訴することは論理的には可能のはずです。しかし、最高裁で、再び違憲判決で負ける事が目に見えて分かるからと言われました。) したがって、この最高裁判決以降、20年近く、刑法200条は残ったまま事実上、使われることはなくなりました。 そして、その間に発生した尊属殺人事件については、 最高検察庁が各地検に対して出した通達に従い、 刑法200条を使わずに、刑法199条で起訴してきた経緯があります。
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