内部監査従事者です。恥を忍んでお尋ねします。ガバナンス、リスク、コンプライアンスの観点から経営的アドバイスを行うには具体…

Question

内部監査従事者です。恥を忍んでお尋ねします。ガバナンス、リスク、コンプライアンスの観点から経営的アドバイスを行うには具体的にはどのように事を進めるのでしょうか。書籍では触れておらず困っています。

Answer 1

様々な書籍が出版されてますが、確かに初学者向けではないかもしれません。
ただ、内部監査協会が監修しているモノで、例えば川村先生の「現代の実践的内部監査」「これだけは知っておきたい内部監査の基本」「これだけは知っておきたい内部監査の実務」あたりは、内容がよくわからないとしても目を通されておいたほうが良いでしょうね。

経営的アドバイスはマニュアルを読めば書いてあるというものでは無く、会社の置かれた環境によって大きく異なってきます。
具体的にはその業界・業態や一般的なベスト・プラクティス事例と、現在の経営の現況との差異を見出し、そのギャップを段階的に埋めてゆくためにどのようにすれば良いのか案出してゆくことです。いきなりベストプラクティスには追いつけないので、腹に落ちるようにどうステップを踏むか？そこが提言のミソです。「そんな事はウチには無理だよ」なんて思われるような提案をしても腹に落ちません。
経営者、マネジャー、クラーク、テンポラリースタッフ様々な階層からヒアリングすることで提言事項は見えて来ます。

たとえば伝票をチェックした時にダブルチェックがされてない伝票が発見されたとします。単なる印漏れとして「次回からきちんとチェックして下さいね」で終わるのは初心者。経験を積んだ内部監査人はその背景を想定し、提言すべきポイントを洗い出します。
なぜ印が洩れたのか？一日に処理すべき伝票の枚数が人数に対して多過ぎるのであれば、メクラ判になっている可能性があります。
①組織として業務負担が過重になっているとしたら職務分掌や管理階層が明確で無かったり、職務教育、担当業務のローテーションが十分に行われていない可能性があります。これらは全社に共通するガバナンスの指摘事項となります。
②チェックが十分に行われない事で法令違反が見逃されていればコンプライアンス上の指摘が生じます。印紙の漏れや過重労働・サービス残業等も発生している可能性がありますね。関連する法律を知ることがコンプラ問題を知るため不可欠です。
③重要な伝票がチェックされないまま処理される可能性があると言うことは、重要な取引が誤ったまま行われる行われるリスクが生じます。例えば購入に伴い対外的な権利義務関係が生じたり、取得時資産登録が必要なものは、発券側で重要性に応じて伝票の種類を変えたり、「重要」表示をさせたり、或いは決裁システムを導入し処理迅速化とチェックの簡素化を図る必要がありでしょう。これらリスク低減のための提言事項はいくらでもあります。

そして、これら提言は、相手に応じて伝えるレベルを変える必要があります。「就業規則がおかしいので変えるように上に言ってください」と平社員の人に言っても仕方無いし、「購入品に無駄が多いので、最低発注ラインを資材庫に表示するようにして下さい」と経営者に言う監査人はいないでしょう？まあここまで極端な例は無いですが、指摘のレベルに応じた伝達の誤りは意外とできてない人が多く「そんな事オレに言われても・・・」と監査対象部署が内部監査人に対し不満を抱く理由のひとつになってます。

要するには特別な監査手続きがあるわけではなく、発見した監査証拠からどれだけ多くの仮説を想定し、その仮説を論理的に検証することで提言の形にまとめて行けるかどうかが監査の肝とするところです。
蛇足ながら、世の中のほかの会社、他の業界で「ベスト・プラクティス」としてどんな取り組みをしているかの勉強をするには日経ビジネス等の経済雑誌で勉強したりするのが一番の早道でしょうね。

以下はそうした切り口の一例です。（さがせば色々ありますよ）
ガバナンスについては監査役協会で出されているチェックリストや内部監査協会の研究会報告などが役に立つと思います。
http://www.kansa.or.jp/support/library/misc/post-91.html
http://www.iiajapan.com/pdf/kenkyu/forum/0310003.pdf
リスクはＥＲＭ関連だと、これあたり：http://www.iiajapan.com/pdf/data/erm/CIAforumNo.15-A-ERM.pdf
コントロールやコンプライアンスは・・これはもう業種によって遵守すべき法律が違いますから、まずは業種に適用される法令の洗い出しと昨今の指摘事例など捜されることをお奨めします。たとえば下請取引関係だとこちらあたりでしょうか：http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2011/download/110516compli1.pdf