由に公認会計士を目指す人が後を絶たないのはなぜか? 生成AIを含むAI技術が、文字通り日進月歩で進化している。 会計・監査の世界も例外ではない。現在でもAIは、 ・大量の財務データの高速処理 ・異常値や不自然な取引の検出 ・膨大な資料の検索・要約 ・監査リスクの兆候把握 ・分析や判断の支援 などに利用できる段階に来ている。 今後さらに性能が向上すれば、従来は若手会計士やスタッフが相当な時間を使っていた資料検索、照合、分析、文書作成、監査調書作成なども、かなりの部分が自動化・省人化される可能性が高い。 もちろん、「公認会計士そのものがAIに完全代替される」という話ではない。最終判断を行い、監査報告書に署名し、法的・社会的責任を負うのは人間の公認会計士である。 しかし、 「公認会計士という職業がなくならない」 ことと、 「現在と同じ人数が必要である」 「現在と同程度の高給が続く」 「資格が転職市場で現在と同程度に有利であり続ける」 ことは全く別問題である。 例えば、従来10人で処理していた業務をAIによって3人や5人で処理できるようになれば、資格自体は残っても、必要人数、採用数、給与水準、資格の希少価値は変化する可能性がある。 ところが、公認会計士試験の人気はむしろ高い状態が続いている。 公認会計士・監査審査会の公表資料では、出願者数は令和2年の13,231人から令和7年には22,056人まで増加している。令和7年試験の最終合格者は1,636人、最終合格率は7.4%である。 かなりの難関試験であり、予備校代だけでなく、数年間・数千時間規模の勉強時間を投入するため、機会費用も非常に大きい。 それにもかかわらず、知恵袋などを見ると、 「高い給料をもらえるから」 「転職に強いから」 「食いっぱぐれないから」 「一生使える資格だから」 といった理由で目指す人が非常に多い。 そこで疑問である。 なぜこれほどAIが急速に進歩し、会計・監査業務が大きく変わろうとしている時代になっても、 「現在の公認会計士の待遇や資格価値が、10年後、20年後もほぼそのまま続く」 ことを前提として進路を決める人が後を絶たないのか。 考えられる理由としては、 ① AIが会計・監査業界に与える影響を十分認識していない ② 「独占業務があるから大丈夫」という安心感が強い ③ 予備校などでは現在の年収や就職実績は強調される一方、将来の資格価値低下リスクはほとんど語られない ④ AIによって単純作業が減っても、会計士需要自体は減らないと考えている ⑤ 「難関資格を取れば一生安泰」という従来型の資格観が依然として強い といったところなのか。 私は「AIで公認会計士が全員失業する」と言いたいわけではない。 公認会計士という職業自体は残るとしても、AIによって業務の相当部分が自動化されれば、必要人数、若手採用数、給与水準、転職市場での資格プレミアムが変化する可能性は当然ある。 それにもかかわらず、 「今、高給だから数年後も高給」 「今、転職に強いから20年後も強い」 「国家資格だから一生安泰」 と現在の状況をそのまま将来へ延長して考えるのは、かなり危険ではないのか。 数年間、多額の費用、不合格・撤退リスクまで負担する試験なのだから、「高収入」「転職に有利」を主目的にするのであれば、本来はAIによる業務構造の変化や将来の資格価値まで考える必要があるはずである。 それでもなお、公認会計士を「将来も高収入で安定した職業」と考えて目指す人が後を絶たないのはなぜなのか。 また、AIの進化を前提としても、今から数年間を投入して公認会計士試験に挑戦することは、経済的・キャリア的に合理的な選択だと考えるか。 監査法人、経理・財務、コンサルティング等で働いている方、公認会計士の方、AIを業務で利用している方の意見を聞きたい。