まずは、民法と建築基準法と二つの条文を見てみましょう。 (境界線付近の建築の制限) 民法 第二百三十四条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。 2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。 (隣地境界線に接する外壁) 建築基準法 第六十五条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。 民法では、建物を建造するときは、土地の境界線から50センチ以上あけなさいよ。違反している場合はお隣さんに建築の中止や変更を請求する権利が与えられますよ…と、書いてありますね? 一方で建築基準法では防火地域や準防火地域で、外壁が耐火構造になっているものについては、土地の境界線ぴったりに建てることができますよ…と、書いてあります。 片方は「50センチ以上あけろ」と書いてあるのに、もう片方では「(条件を満たせば)ぴったり建ててもいい」と書いてあるのです。 こういう場合は、「どっちの決まりを守ればいいの?」と、混乱してしまいますよね? 法律の世界では、こういう矛盾はわりとよくあることなのです。「え?」と思ってしまうかもしれませんが、よくあるのです。(笑) 法律には相対的な関係として、「一般法」と「特別法」という関係があります。 民法と商法で、次のような規定があります。 (法定利率) 民法 第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。 (商事法定利率) 商法 第五百十四条 商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年六分とする。 民法では、利息が取れる債権がある場合に特に何も約束がなければ「年5%」の利息が取れます。 一方で、「商行為」によって生じた債権の場合は「年6%」だというのです。 このような違いが生じることは法律上あっちこっちで見かけることができます。 「一般法」という法律は、「全般的な決まり」を規定しています。他に決まりがある場合はそちらを優先し、特に決まりがない場合は「一般法」に従いますよ・・・と解釈します。 他方、「特別法」というのは特別な事情、特別な条件があるときにだけ適用される法律です。このとき、特別法の決まりは一般法の決まりに優先します。ですから、 原則:建物をたてる場合は50センチあけなさい ↓ 例外:防火地域で耐火構造ならあけなくてもいい ということになるのです。 このことが、最高裁判所の言っている、「建築基準法の規定は、民法の相隣関係に関する特別法として適用される」という解釈のお話です。
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