現役の通訳者です。 同時通訳ができるだけの実力を持つ通訳者はごく一握りで、その技術を会得するのは容易ではありません。 某テレビ局では各言語の通訳者を100人程度抱えているそうですが、そのうち同時通訳ができる通訳者は2~3人だという裏事情を耳にしたことがあります。 通訳者のお仕事は男性だから不利…というわけでもありませんが、収入面や社会的な身分が安定しないので必然的に女性の割合が高くなってしまっているのは事実です。 通訳者のうち7割~8割が女性とのことですが、男性だから差別されるというわけではありません。 通訳業界は実力勝負の世界なので性別が原因で差別されたり・逆に優遇されることもありませんが、芽が出るまでの下積み期間の間に男性は周囲からの圧力などの影響もあるのでしょうか、自主的に通訳者として安定するまで頑張るという選択肢を取り下げてしまう方が多くいらっしゃいます。 収入面でも社会的な身分も安定しない期間がどれだけ続くかにもよりますが、未だに男性が家計を支えて家族を養うという役割を担うのが当たり前という風潮が根強いことも男性通訳者の育成を妨げている要因のひとつなのかもしれません。 私の個人的な意見を申し上げますと、通訳者などの技術職は常に現場に出て技術を磨いて(保持して)ナンボの職業だと思っています。 女性は出産前後の期間は本人の意思に関係なくどうしても戦線離脱せざるをえないのですが、戦線離脱する期間が長ければ長いほど一度身に付けた技術を少したりとも逃さず保持し続けることが難しくなります。 対する男性は、出産に左右されずに常に第一線で働ける・体力的に女性よりもタフなので短時間での移動が多い依頼でも安心して任せられるなどの男性ならではの利点も多くありますし、男性通訳者の育成と活躍が望まれるところです。 通訳者と同時通訳者の違いについては説明が難しいですが、同時通訳者は通訳者の一員です。 詳しく書くと、通訳技術を持った通訳者という集団の中でも特に技術が秀でていて、同時通訳ができるだけの技術を持った人が同時通訳者…ですね。 通訳業界の花形、通訳志望者が目指すべき頂点に君臨する技術者、通訳者の最高峰… 同時通訳者の仕事について説明しようと思ったら、いろいろな表現ができると思います。 字数制限の都合もあり簡潔にお伝えすることが難しいので、詳しくはウィキペディアの該当ページをご覧ください。 一部「うーん…」と思う記述もありますが、簡潔によくまとめられていると思います。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E8%A8%B3 質問者様が通訳者を目指すのなら、ご自分がどの分野に進みたいかという志望をある程度まとめる必要があります。 通訳者が求められる現場は様々であり、たとえば会議通訳者と司法通訳者では求められる知識や技術がまったく違ってきます。 会議通訳者になりたいのに、司法通訳者になるための訓練を積んだのでは結果的に遠回りになってしまいます。 学歴や所有資格に制限はなく、実力と人脈がモノを言う世界です。 ●外国語力 ●母語能力 ●一般教養/一般常識 ●専門知識 これらすべてがどれひとつとして欠けることなく、ピラミッドの頂点のさらに頭頂部分に位置する程度の知識を身につけないといけません。 これで良しというわけでもなく、通訳者を目指すべくスタートラインに立てるだけの最低限の実力が上記のレベルですから、道はまだまだ険しく長いです。 最低でも英検準1級合格程度の実力がありましたら、通訳スクールで学ばれると良いでしょう。 通訳スクールは基本的に働きながら学ぶことを前提にしていますので、社会人の方でも問題なく学ぶことができます。 一方全日制であり働くにしてもアルバイト程度…という制限は出てきますが、現時点で実力に自信がないけれど一日も早く通訳技術を学びたいという場合には、語学系専門学校の通訳科で学ばれると良いかと思います。 話のタネに先日語学系専門学校の通訳科の設備・授業風景を見学に訪れましたが、設備や教諭といった学習環境がとても優れていたのが特徴的でしたが…ただし、授業料は年間100万円オーバーでした。。。 私は同時通訳者として第一線で活躍している先生に弟子入りしたのち、通訳スクールで学びました。 その後は通訳派遣会社を経てフリーへと転身しましたが、受け皿さえあれば弟子入りを強く薦めたいです。 ただし、弟子を取る先生と巡り会えたのは幸運だという自覚が自分でもありますから、弟子入りはあまり一般的ではありません。 学校卒業→社会人経験を積む→通訳スクールで学ぶ→派遣通訳者として下積み→フリー 学校卒業→社内通訳者として勤務→定年まで【会社員】として働く という進路が一般的ではないかと思います。 通訳者にとって寄り道も貴重な財産ですから、寄り道を楽しみながら自分の心の中のたんすの引き出しを常に満タンに保てるよう、頑張ってください。 参考までにどうぞ。
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