将来アメリカで医師として研修をしたいと思っている医学生(３年)です。今USMLEのステップ1を勉強しています。

Question

将来アメリカで医師として研修をしたいと思っている医学生(３年)です。今USMLEのステップ1を勉強しています。大学の先生でスタンフォードかオックスフォードに６年生で数ヶ月ポリクリに行けるようにマネージしてくれる先生がいますが、まず早いうちにTOEFLのiBTで100点以上、またはILETSで７レベル以上をとるようにアドバイスを受けました。５年になったらステップ1は取るつもりですが、基礎的な英語のレベルを上げるにはやはりハイレベルな英語のスクールに通うなりしたほうがいいのでしょうか？モチベーションの面でも･･･?ＴＯＥＩＣは独学で勉強して一年半前に受けたとき910点、英検はぎりぎりで１級ですが、こんなレベルでは到底アメリカ臨床留学に必要なレベルには達しません。アドバイスお願いします。ちなみに田舎に住んでいて、毎週末USMLEの勉強のために都会に出てきてます(カプランに)。やはり生活が英語中心になるくらいに勉強しないとだめなのでしょうか？

Answer 1

うーーーん。

最近の医学部の教官の中には、USMLE とかアメリカでの医学教育の意義が分からずに、「私も若い頃は、学生の頃はUSMLE /ECFMG を勉強した」とは「アメリカのポリクリを学生時代に経験した」とかいう表面的な経験だけで、学生に「USMLE の勉強や英語の勉強」を勧める人が多くて困ります。

あなたが、日本の医学部の学生であれば、あなたの今後のキャリアーにとって最も大切なのは、「日本の医師国家試験に合格する」ことです。そのために多くの努力を重ねていくのです。残念ですが、USMLE と日本の国家試験は「方向性」が９０度以上違います。ですから、USMLE の勉強だけしていては、日本の医師国家試験には合格できなくなります。この点を勘違いして、同じ「医学の勉強だから」と言って、USMLE の勉強だけしていて、日本の国家試験勉強を軽視して、国家試験に不合格になる人が少なからず毎年います。これは、大変大きな問題ですが、日本の医学部の教官はこの事実に決して言及しません。

ですから、あなたは教官の言葉に惑わされずに、あまりUSMLE の勉強に熱中せずに、日本の医師国家試験の勉強にも時間を割くことをお勧めします。

外国でのポリクリと言っても、所詮は「お客さん扱い」ですから、そんなに高い英語での会話力は要求されません。（学生が、日本の臨床現場をBSLで回るときにも「お客さん」扱いされるのと同じだと考えれば良いです。せいぜい、簡単な「机上の知識」についてオシャベリするレベルです。多分、３年生だと、またまだ「プロ」と「学生」の大きな力の差を認識できないと思いますが、、、、。）

３年生のうちから、「外国でのポリクリのため」に多くの時間とお金を裂くのは、あまりに無駄だと思います。止めておいたほうが良いです。（特に、お金は親が出しているのですから、無駄な事に親のお金を浪費する必要はないと思います）

そして、最も大切なことですが、「医師」にとって最も大切な事は「腕が立つ」ことです。「外国で研修」してきた医師でも、全く「腕の立たない」人は沢山います。研修した場所は関係ありません。外国で研修した人がことさらに「外国で研修すると力が付く！」などと言いますが、まったくそんなことはありません。ダメな医者は外国で研修してきてもダメ医者ですし、腕のいい医者は日本で研修しても大変腕が良いです。（当の「力が付く！」と吹聴している医師が、「口先だけの医者」と陰口を言われていることがありあます）外国で研修するほうが「言葉の壁」「文化の壁」があって、腕の上げるには時間が掛かるかもしれません。

外国で医学の訓練（研修ではなく、それより上のレベルの技術習得）をすることとのメリットは、「日本ではまだ行われていない新技術をいち早く習得できる」という点です。そして、「日本ではまだ行われていない新技術を習得する」と日本へ帰ってから「何の苦労もせず」に偉くなれる という点です。

少し前ですと、「肝移植」。最近ですと「生体肺移植」です。それ以外の、「確立された医学技術（たとえば骨髄移植や冠動脈手術）」に関しては、日本と外国で差はありませんので、外国で訓練しても、まったく評価されません。

また、いくら新技術でも、日本では定着していない技術だと、「宝の持ち腐れ」になってしまい、外国での訓練が徒労に終わってしまいます。（たとえば「心臓移植」。日本では症例数が少なすぎて、外国で習得してきた技術を発揮できずにいる人がたくさんいます）

あまり教官の言葉に振り回されずに、あなたにとって必要なことを見極めて、将来のキャリアアップになることに時間を割くことをお勧めします。

（もし、今あなたが、自分が高校時代に夢見ていた大学よりも低いランクの大学に在籍していて、毎日が不満であることが理由で、３年生からカプランに通っているなら、もう一度「医者とはどんな職業か？」考え直してください。挫折をバネに、大きく飛躍することは良いことですが、その方向性が間違った方向へ向かうと、一生苦しみ続ける事になります。医者の中には間違った方向に、不満のエネルギーを使ってしまい、大変苦しんでいる人が沢山います。）