わかりやすく言うと、「明日は我が身」。 上が抜けて空きができたら繰り上がるようなものなので、可能な限り上がやってることは吸収するようにしてました。 ただしやらせてほしいとは言わずに見て覚える。 やれと言われた時に困らないよう、頭の中で自習してその時に備えるわけです。 同様に若いヤツには明日は我が身だからと教え、任せられることはなるべく任せてました。 自分が育つだけでなく後継者を育てるのも大事。 私が育ったのはハーバータグ兼作業船の会社で、純粋なタグではないので外航船に近い物もありました。 ドラフトやトリム計算、積み荷の計算とかがないだけで遠くはハワイやグァムまで行ったので、航海術や入出港手続きはタグの領域を超えてます。 また、タグ自体は操船が全てですがペラ周りが特殊なので一軸の技術は全く役に立ちません。 「タグは定年になって乗るもの」という話を何度も目にしたことがありますが、機関部は流用が効くけど甲板部、特に操船は頭が柔軟でないと無理です。 たいていの人は操船している手元を見ても何が何やらわかりません。 なぜそうするのかが理解できず、理解できても真似しようとして実際にやると思い通りに船は動きません。 正確に言うと船が動かないのではなく船を動かせてない。 タグはクセのない素直な船なので指示された通りきっちり動きますが、まずその指示が正しくない。 指示が正しくないから思い通りに動かせないのです。 慣れた人は鼻くそをほじりながらでも余裕でこなしますが、頭の中には常に右舷機のベクトルと左舷機のベクトル、さらに合成されたベクトルが描かれている状態でしょうか。 それプラス本船の動きに対する予測。 二手も三手も先を読み、あらゆる選択肢の中から最善の手を選び出し、それに合わせて船を操る。 私の知っている限りでは日本でタグに関する本は一冊。 これから覚えていく人やタグのことを知りたい人にとっては良い資料になるでしょう。 でも、すでに船長経験のある人にとっては物足りない内容なのは事実。 実際に参考書的な物を作ろうとしたらZペラの操船理論だけで一冊、タグの作業概念でもう一冊にはなります。 そういう参考書もない世界のものを、無線をやりながら横で見て覚えていくわけです。 余計な燃料も使えないので、作業の合間に本船やパイロットが来るまでのわずかな時間が練習時間。 今は船長に教える側なので滅多に自分で操船することはないですが、それでも船長が休みで代わりにやったりする時は練習したりしてます。 ブイを正面に見た状態で、定格限界まで回してブイの回りをクルクル回ったりとか。 これは微調整が必要で修正する時の主機の調整幅も大きくなるので、主機やペラの調子を見るのに都合がいいのと、あと感覚のリハビリにもいいので。 自転車と同じで完全に覚えたら忘れることはないですが。
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