医師の仕事について 友人が今研修医なのですが、先日患者さんが亡くなってしまい、大声で泣いたそうです。 医師の…

Question

医師の仕事について

友人が今研修医なのですが、先日患者さんが亡くなってしまい、大声で泣いたそうです。

医師の仕事は人の死に立ち会う事も多いと思いますが、経験を積んでいくうちに感情が麻痺してくるというか、慣れていってしまうものなのでしょうか。

私は彼のような医師に診てもらいたいと思いますが…。

医師としてキャリアを積まれている方の気持ちをお聞きしたいです。

Answer 1

やはり、最初の頃は、思い入れのある患者さんが亡くなると、泣いてしまった頃はあります。

本当は、ダメなんですよ。泣いてくれて嬉しい、と思う家族もいるかもしれないけど。泣いて欲しくない家族もいる。家族に感情を押し付けるわけで、申し訳ないが、プロ失格ではありますね。

あなたは友人なので微笑ましく感じたとしても、実際の患者さんの家族は不快だったかもしれません。

慣れるんじゃないんです。家族の前で大声で泣くのは、プロ失格なんです。

①主治医が泣いていると他の患者が不安になる

他にも大勢の患者を抱えるわけで。誰かが死んだ瞬間も、誰かの主治医であるわけですから。どんな時も、心を乱すのは良くない。例えば、これから手術だ、というのに、主治医が泣いていたら。手術前の患者はたまったものではない。

「いや、他の患者さんが死んで悲しいのは分かるけど、切り替えてよ！こっちは生きてる患者なんだから」となりますよね。

また、そういう「弱い」主治医を不安に思う患者も少なくないです。

②泣きたいのは家族なんだから。

これは、上の先生から一番注意される台詞。

泣きたいのは家族なのに、主治医とか看護師が泣いてしまうと、家族は慰める側にまわったり、困ったりするわけで、それはダメ。

家族が泣いて、主治医が慰める。死を受け入れられるように話す。というのが、仕事です。

葬式の時、葬儀屋さんが涙ぐむならいいけど、わんわんと泣いてたら、貴方はどう思いますか？いや、ちょっと家族に失礼じゃないか？と不快に思う時ありませんか？

あくまでも、家族を中心に考えるべきです。そこに医者の私情を挟んだら、プロ失格。

③死が悲劇とは限らない。

長く病気で苦しんだ方とか、高齢の場合、介護が大変だったとかの場合、家族は悲しいけど、ほっとしている場合もある。

その場合は、主治医が泣くと、泣いてない家族を精神的に負担になる可能性があります。苦しくない死をのぞんでいた私達は、ひどい家族だったのでは？とか。

なので、感情は押し付けるべきではない。家族の感情を尊重するべきなんです。泣くなら泣かせてあげればいい。ほっとするなら、ほっとさせてあげればいいんです。

④医療ミスがあったのでは？と疑われる。

主治医が泣いているのならば「死を予測していなかったのか？」「悔しい思いがあって、本当は助かったのでは？」と不信に思う家族が出てきます。それ位、医者が感情を乱す、というのを不快に思う家族もいるということです。

20年たっても「医療ミスだったのではないか？」と不満に思う家族がいるでしょう？そうやって、死＝医療不信、になるのは死を受け入れられてないですし。そうやって誘導してしまった医療サイドの責任でもある。

⑤本人の精神衛生上、好ましくない

そういう風に、思い入れをしていくと、患者さんが亡くなるたびに、心を削られるので、メンタルの病気になりやすくなったり、心が折れたりしてしまう。長く続けられない。

家族が亡くなった時、冷静でいられるはずがなく。医師も感情を乱してしまうと、感情の衝突になってしまう場合がある。死を受けいれやすくするのも仕事の一つなわけで。ともに悲しむ、励ますなどは良いとして、感情を乱すのは、やはりプロ失格でしょうね。

ただ、私も、研修医の頃、思わず、泣いてしまって。当時の指導医から、注意されました。

「本当は泣きたいのは家族なんだぞ。顔洗って、10分で切り替えろ。他の患者の前で、その悲壮な顔はするんじゃないぞ」

ただ、多くの癌患者を失ったベテラン医師が、心の病になってしまったり。人がたくさん死んでしまう時期は、どうしても酒の量が多くなったり。

ベテラン医師といえども、すぐに割り切れたり、死に慣れる、という単純なものではないです。

私は、思い入れのある患者さんが死ぬと。

のみにいって強い酒を飲んで故人に捧げる、という儀式をやって、自分の中でけりをつけます。一人、御通夜みたいなもんでしょうか。やっぱり、長く一緒に闘病したりしていて、仲良くなった患者さんはいますからね。

「闘病お疲れさん。いずれ、そっちに行くので、お先にどうぞ」と杯を空ける。

ただ、人は死ぬ。必ず死ぬならば。残された家族は、その死を受け入れて生きねばならないわけで。

家族が死を受け入れられるように、サポートするのは、医師、看護師の患者に対する最期の仕事だと思っています。

だからこそ、家族を差し置いて、泣いたりするべきではないと思いますね。