代書屋というのは江戸時代から歴史のある古い商売で特に試験なども無く自称字が書ける人ならば思い立てばすぐ始められる仕事でした。 お彼岸の時期に木箱をひっくり返した机を置いて墓地で営業する卒塔婆専門の代書屋などもいたようで「臨時の小遣い稼ぎ」という面が強かったようです。 開国して明治になり、最初と言ってもいいぐらいに登記制度が整備されました。このときに「代書屋」から「代書人」に名前が変わり、基本的には登記制度のために存在する職業となりました。それだけでは収入も少ないので字が書けない人のためにお手紙を書くような仕事も相変わらずありました。 このころは区裁判所(当時は登記を扱うのも裁判所の役目でした)の門前に事務所を構え、登記手続をしに来た人の代わりに申請書類を書いたり、裁判所へ提出する必要書類を書いたり、その合間に私用のお手紙を代筆したりして代書人は生活していました。 それだけでは生計が成り立たないと言うこともあり、電話すらない時代のことですので登記手続は一日仕事でしたので暇つぶしする場所が求められていたというニーズもあり、代書人たちはお茶やお菓子、食事、酒まで振る舞うようになりました。「登記茶屋」と言って大正末ごろまではかなりの数が存在したようです。 一方でこのころ、代書人たちの中でも特に優秀な人たちは裁判所の構内に事務所を開くことが許可され、普通の代書人とは違う職能集団だと自認するに至ります。 1919年にそういう構内代書人たちが「司法代書人」と呼ばれ代書の仕事をできるのはこの人々だけだということになりました。裁判所構内に事務所を設けていない代書人は取り締まりの対象にすらなったのです。ここが、司法書士と行政書士の歴史上の分岐点です。 さて、そうとは言えど字が書けない人に取ってみれば代わりに文章を書いてくれる人は必要でしたし、またワープロなどもない時代ですので「きれいな字で書いて欲しい」という需要もありました。ですので根拠法がないまま一般代書人たちの商売も続くことになります。 向こうが司法ならこっちは行政だ!というわけで一般代書人たちは一部で行政代書人と名乗り始めました。その後、司法代書人が司法書士と名前を変えると一般代書人たちの自称も行政書士と変わりました。ここで「代書人」という言葉が消えて「書士」となることになるでしょうか。 自称行政書士たちはモグリ営業を続けつつも再三議会に「行政書士法」の成立を求めることになります。しかし無視され続けました。 このころ一般代書人(自称「行政書士」)になる資格は試験ではなく持ち株制だったようです。株があまってればなれますが、あまっていない場合既に代書人をやっている誰かにお金を積んで権利を譲ってもらうという仕組みです。 そして敗戦でそれまで効力のあった省令等が全て失効します。ここでまた「自称字が書ける人なら思い立てばすぐできる」仕事に逆戻りします。 法務省がイニシアティブを取る形で司法書士法はすんなり再建されますが、一般代書人の方は相変わらず法的根拠が曖昧なまま仕事を続けていました。 そして一般代書人の中には依頼者が読み書きできないのをいいことに適当な書面を書いて一般人を困らせる事例が多発しましたので、市民の側から「あいつらに箍を嵌めてくれ」という要望が多く出されるようになりました。 そういう事情で最初は都道府県条例として「行政書士条例」が作られ始めます。これが公式に「行政書士」という言葉が使われ始めた例と言うことになります。今でも形式的には行政書士の試験の合否を判断するのは都道府県知事になっているのはこれが理由です。 敗戦により数多くの法律が改定されていく中で、議員立法の形で行政書士法が議会に提出されます。この「議会」というのは大日本帝国議会です。そして1947年第92回大日本帝国議会で行政書士法が成立します。ちなみに大日本帝国議会は92回で終わっています。 そもそもが法律を作る能力は国会議員よりトップ官僚の方が高いのが事実なのに、議員立法で作られて混乱の中十分審議されることもなく成立してしまった行政書士法は、いま見てもスッキリしない部分があり行政書士と他士業の業際問題が絶えないのも大元はそこにあるような気がします。 明治に近代法制が整備されはじめたころまで遡らないとわかりませんが、弁護士以外の法律系士業は本質的には代書人だと思います。司法書士は登記申請書類と裁判所提出書類の代書、税理士は税務署提出書類の代書、弁理士は特許庁提出書類の代書、社会保険労務士は雇用労働および社会保障関係の代書という具合です。 これらの書面は一般人がその書面にとても詳しいと言うことが考えにくいため、書面に関する限り法律相談に乗っても良いとされました。ここに限定的法律相談権が発生しまして、弁護士の数が諸外国に比べれば極端に少ない日本でも社会が営めたわけです。 唯一「この書面を書きなさい」と定められていないのが行政書士で、絶対に他士業法に抵触しないように行政書士業をやろうと思うなら字が書けない人に代わってお手紙を書くのが唯一の方法です。 そんな需要が今日日あるわけはないので、他士業法に抵触しない範囲で「行政書士の得意分野」という形で打ち出してきたのが許認可申請書類というわけです。行政庁に提出する書類なのでこれは理解できますね。 行政書士が行なう入国管理の申請取次は行政書士がさらに研修を受けて考査を通ったら行える「資格内資格」という奇妙な状態です。ただ、これは「入国管理局」が「入国管理庁」に格上げになるのと同時に「入国管理士」というような名前で行政書士から切り離される公算が大きいです。 最近の行政書士が言っている「民事法務」というのは他士業の職域に踏み入ってしまう可能性が高く、他士業からは評判悪いです。また、許認可でやっている行政書士は「手間がかかって、単発で、単価が安い民事法務なんてどうしてもと言われないとやらない」という認識のようです。 長くなりましたが、こういうことになっています。
なるほど:2
代書屋=代わりに変わって書く人です 昔は字を知らない書けない人がいて その人の変わりにできたのが代書屋ですね 対比語としては代理人でしょう なので例えば行政書士が内容証明を送る場合 代理人行政書士とは書きません 代書人行政書士と書きます
なるほど:1
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