解決済み
ユネスコでは「人間と自然の共同作品」と定義しています。文化遺産の場合、歴史的に自然を開拓して建物を建て町や都市に発展してきた経緯があり、そのた建物や都市が世界遺産に登録されてきました。これはキリスト教において、「人間は自然を支配する権利を神から与えられている」とする考えを反映したもので、未開の自然を開拓する精神こそが文化であると考えられてきたことによります。 しかし、20世紀後半になると環境破壊が人間の生活を脅かすようになり、「人間と自然の共存」が重視なテーマとなり、その考えを世界遺産に投影したのが文化的景観です。 人間が適度に自然を残して活用し、文化的な暮らしを営んでいる風景全体を評価しようという考え方です。それまで明確な建物や町が対象だった世界遺産に、風景という漠然としたものも含めるようになった制度改革でした。 具体的には農業分野や自然崇拝の宗教において適用され、その対象1号はニュージーランドの先住民マオリ族が自然崇拝していたトンガリロです。 一方、農業分野では日本の里山の在り方が世界的に評価され(satoyamaはそのまま世界に通じる言葉になりました)、その考え方が大きな影響を与えています。やがて元々あった自然だけでなく、人工的に作られた自然景観も対象になるようになりました(例:ワイン用の葡萄畑)。 10年程前から世界遺産が増えすぎたため、推薦は一国二件までで、文化遺産と自然遺産を一件ずつとしましたが、文化的景観を適用したものであれば自然遺産の代用と見なし、文化遺産を二件推薦することを認めたことが、文化的景観が自然的側面を強く持っていることを表しています(2020年からは一国一件になります)。 しかし、文化的景観適用の判断は難しく、日本では「紀伊山地の霊場と参詣道」と「石見銀山」にしか適用されていません。紀伊山地の霊場は自然崇拝と共生する仏教や神道の建物(自然の中に存在する寺や神社)、自然の中を歩く参詣道(熊野古道)が評価され、これは分かりやすいのですが、石見銀山は鉱山開発で自然を開拓、すなわち環境破壊しているにも関わらず、土砂崩れ被害防止や鉱物溶鉱用の薪の確保目的で植林を行っていたことで形成された景観であることが評価されました。 一方で自然崇拝の象徴として文化遺産に登録された富士山は文化的景観が適用されていません。 日本では文化的景観の採用をうけ、文化財保護法に重要文化的景観という制度を盛り込み、これを本格的に活用して世界遺産としたのが、今年登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」ですが、これも世界遺産としては文化的景観の適用をうけていません。 このように文化的景観は簡単には理解できない面がありますので、試験勉強頑張ってください。
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