勉強し始めたのは、何かしらの1級を持っていると知識が深まるし、視野も広がって話のタネになるんじゃないかと思ったからです。 また、自分で目標を決めて頑張って勉強したという思い出がそれまで無く、出来る範囲でいいやというような生活態度だったので、何かを乗り越える経験や達成感が欲しかったのかもしれません。 漢字に興味はありませんでしたが、国語が得意だったので、英検・数検などの1級よりも自分にとっては簡単に取れそうで、かつ、それなりに努力しないといけない漢検1級を選びました。 勉強中は、特に興味のない分野でしたから、つらかったです。 最初はどんどん点が伸びるんですが、合格点に近づくにつれて停滞してきて、これ以上どうすれば良いのかと迷い始めてしまうんです。 でも徐々に、日本語の成り立ち・日本の文化・歴史にまで漢字が関係していることが分かり、面白くなってきました。 この文脈ならこの漢字じゃないか、あの漢字だろうか、と考えに考えて正解を導き出した時なんかは、頭を使っているという実感があって気持ち良かったです。 合格した時には、今までやってきたことが一応は形になって帰ってきたのだと思って安心しました。 合格したこと自体よりも、周りの人たちが私以上に喜んでくれたことが嬉しかったです。お祝いにパンを一つおごってくれた友人もいて、そういう、自分と周囲とのささやかな繋がりが見えたことが私は嬉しかったです。 やっぱり漢字に興味のある人でないと漢検1級は大変です。 合格しても世の中で評価されることも特にないし、マニアックだし、変わり者だとか思われることもあるかもしれません。 でも、私は漢方薬を飲むんですが、そこに書かれているわけのわからない漢字の成分表示が、ある日突然、意味を持って自分の目に飛び込んできたときには、本当に感動しましたし、お年を召した方が仰った聞き慣れない熟語を、正しく理解して喜んでもらえたときには、1級の勉強をして良かったなと思いました。 他の合格者の皆さんも、その人その人が考える別の価値を沢山挙げて下さるだろうと思います。 1級のための勉強は時間の無駄遣いだと言う人もいるでしょうが、少しでも興味があるのなら目指して損はない、というのが私の実感です。
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