【不動産登記】審査請求をすることができるか否かについてお聞きします。

Question

【不動産登記】審査請求をすることができるか否かについてお聞きします。代位により債務者のために相続登記を申請した債権者は、当該相続登記の抹消の処分について、審査請求をすることができる（大決大９．１０．13）。

これに対して、Aの債権者Bが代位によりA所有建物について所有権の保存の登記を申請した後において、第三者Cが当該建物の一部について重ねて所有権の保存の登記をした場合には、Bは、C名義の所有権の保存の登記については、審査請求をすることができない（昭30.5．２７民事甲1036号）。

ここで質問です。
後者は、なぜ、審査請求をすることができないのかを教えてください。
この事例は、Bの代位による所有権保存登記がCの保存登記に越されてしまったということでしょうか。事案がどのようなものなのかを知ることができないため、この先例の理解をさらに困難なものにしています。
事案がどのようなものかについても教えていただけると助かります。

Answer 1

昭和29年10月11日付登第231号熊本地方法務局長照会・昭和30年5月27日付民事甲第1036号民事局長回答

家屋の二重登記に関する疑義について

【1185】 標記に関し左記のような疑義がありますが、目下差掛つた事件がありますので至急何分の御回示仰ぎたく御伺い致します。

記

甲がＡ家屋の所有権保存登記を為すに際し、家屋所在地番を4番地の3とすべきを誤つて4番地として登記した。その後乙はＡ家屋の一部たるＢ家屋につき家屋所在地番を正当に4番地の3として所有権保存登記をした。（Ａ家屋中のＢ部分の家屋についてはその所有権につき甲乙間に訴訟中）

一、右事案において、既に4番地の3にＢ家屋の登記が乙によつて為されている以上、Ａ家屋に対する甲の登記は最早補正によつて有効の登記となす余地なく、無効の登記というべきであるからＡ家屋の所在地更正登記の申請があつても受理すべきでないと考えるがどうか。

二、若し誤つて右所在地更正登記をした場合は、不動産登記法第49条2号に該るものとして同法149条ノ2以下の手続により該更正登記を抹消してよいか。

三、甲の登記はその全部を無効と解すべきものと思うが、若しＡ家屋の登記中Ｂ家屋の部分のみが無効と解すべき場合、Ａ家屋の所在地を正当地番に更正したときは登記官吏は前項の法条によりＡ家屋の表示中Ｂの部分を抹消すべきものか。

四、Ａ家屋の保存登記を丙が甲を代位して申請し然る後丙名義に所有権移転の仮登記を了している場合、丙は、乙のＢ家屋所有権保存登記申請を登記官吏が受理登記したことの処分に対し、不動産登記法第150条の異議申立をなす適格はないと考えるがどうか。

回答

昭和29年10月11日付登第231号で照会のあつた標記の件については、次のように考える。

記

一 単に建物の表示更正の登記をするのであるから、乙所有のＢ建物の登記の有無にかかわらず、その申請を受理すべきである。

二 右により了知されたい。

三 登記官吏は、甲又は乙の所有権の登記の有効無効を判断すべきでない。したがつてＡ家屋について所在地番の更正登記をしたときでも、その表示中Ｂの部分をまつ消すべきでない。

四 貴見のとおり。

丙 （前掲回答文中での呼称。以下同じ） は、自分が代位したＡ家屋の甲名義の保存登記を受理されているので、乙のＢ家屋所有権保存登記については利害関係がないと判断されたのではないでしょうか。Ａ家屋の一部たるＢ家屋の所有権の帰趨については訴訟等で決着を付けるべきことで、審査請求が認容されて乙のＢ家屋所有権保存登記が抹消されたからといって、それで当該部分の所有権が実体法上甲のものであると確定するわけではないからです。

Answer 2

先例の内容は、他の回答者様が転載いただいているようですので、登記研究９５号３７ページの解説だけを引用しますと、「第４項は、照会の場合における仮登記名義人丙は、Ａ家屋の登記簿上の名義人であつて、Ｂ家屋の登記簿上の名義人ではないから、Ｂ家屋の所有権保存登記に対する登記官吏の処分については、不動産登記法第１５０條の異議の申立をすることはできないという趣旨である。」ということです。