解決済み
行政書士試験【2010年 問30】抵当権者による返還請求権A銀行はBに3000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。この場合に、以下のア~オの記述のうち、次の【考え方】に適合するものをすべて挙げた場合に、妥当なものの組合せはどれか。なお、対抗要件や即時取得については判例の見解に立つことを前提とする。 【考え方】:分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する。 ウ、Bと取引関係にない第三者によって伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合に、A銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できる。 オ、第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合において、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができない。 どちらも「適合する」です。 ウもオも相手が177条の第三者でないのは同じなのに、オだけ返還請求が認められるためには特別な事情が必要となっている理由を教えてください。
158閲覧
>ウもオも相手が177条の第三者でないのは同じなのに、オだけ返還請求が認められるためには特別な事情が必要となっている理由を教えてください。 まず、質問者さんがご指摘の通り、設問の「考え方」によれば、抵当不動産上から分離物が搬出されれば、分離物に及んでいる抵当権の「対効力」が失われますが、177条の「第三者」に該当しなければ抵当権の効力を対抗できます。そして、ウは「無権利者」、オは「背信的悪意者」ですから、ともに相手方は「第三者」に含まれず(判例・通説)、抵当権者は抵当権の効力を主張できます。 では、ウとオの違いは何かと言えば、ウは「元の場所=抵当不動産上」への返還請求であり、対してオは、「抵当権者のもと(抵当不動産上ではない)」への直接的な返還を求めている点です。 抵当権も物権ですから、担保価値を維持すべく、物権的請求権として、抵当不動産上への分離物の返還は肯定されます(ウ/最判昭25.12.19)。しかし、抵当権は、「占有を要素としない物権」ですから、占有権限のない抵当権者のもとへ分離物を直接返還するよう請求できないのが「原則」になります。例外的に、「債務者(設定者)による、適切な維持管理が期待できないなどの特別の事情」があれば自己への引渡等も認められるとするのが判例です(オ/最判平17.3.10)。
< 質問に関する求人 >
行政書士(東京都)この条件の求人をもっと見る
求人の検索結果を見る
< いつもと違うしごとも見てみませんか? >
覆面調査に関する求人(東京都)この条件の求人をもっと見る